これからの時代、エネルギーは人と人をつなぐ紐帯になります。その繋がりをデザインしたいと思っています。
蘆田 暢人
Masato Ashida
蘆田暢人建築設計事務所代表 / ENERGY MEET 共同代表/ Future Research Institute 共同代表/ Energy Design Hub Organizer
2001年京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。2001~11年内藤廣建築設計事務所。2012年蘆田暢人建築設計事務所設立。同年ENERGY MEETをオオニシ・タクヤと共同設立。2018年Future Research Instituteを設立。建築の設計にとどまらず、エネルギーとデザインをテーマに、家具からまちづくりまで幅広い領域で活動を行う。代表作「折板屋根の家」「松之山温泉景観整備計画」「キールハウス」「ryugon」。「これからの建築士賞」、「グッドデザイン賞」、「日本都市計画家協会賞」、「神奈川建築コンクール優秀賞」「ASIA DESIGN PRIZE」など受賞多数。
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僕はエネルギーのデザインをやっていて、こんな場所を作りたいという理想の形がこの情景です。これは、日本の囲炉裏の写真です。真ん中に火というエネルギーをみんなで囲んでいる。昔は割と当たり前の風景だったんですが、今こうやってみんながエネルギーを囲んで笑うことってあまりないと思います。エネルギーを中心に据えるというか、エネルギーがあることで、みんなが集まって、みんなが笑える。そういうエネルギーをデザインしたいといつも思っています。
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これは僕がENERGY MEETで関わっているプロジェクトで、長野県の小布施町に設計した小水力発電所です。小布施の街なかに計画されたものです。ここ数十年、エネルギーは都市から離れたところでつくり、都市に運ぶという技術が発展しました。いわば迷惑施設のように扱われています。街なかにエネルギーの発電所をつくるというのは、都市計画としてはかなり画期的なんじゃないかと思っています。人から遠ざけていたものをもう一度、人の傍に取り戻す。そこにクリーンで人と共存するエネルギーの未来があると思います。
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皆さんこの写真、少し異常なんですけど、これが普通じゃないことが分かりますか?
分かりにくいかもしれませんが、実は誰もここに住んでないのです。これは、つい1週間ぐらい前(2019年12月時点)の福島第一原発の近くにある双葉町の現状です。ちょうど双葉駅前の写真で、そこをいま工事してるんですね。もう一度、町を取り戻すべく工事をしています。現在はここは全部帰還困難地域になっていて、立入禁止の境界が物理的に引かれ、誰もこの中に立ち入れません。エネルギーは本来ボーダレスで、みんなで共有できるものだと思っています。でも、原発は境界線を作ってしまったのです。
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僕たちが関わっている、新潟県の松之山温泉のプロジェクトです。松之山は、冬に3mぐらい雪が積もる場所で、数十年前までは冬になるとこの集落から出られなかったそうです。まさにサバイバルであった町を、エネルギーで解決したプロジェクトです。具体的に言うと、松之山温泉に湧き出る98℃の温泉を熱交換して、それを温泉街の道路に流すという仕組みをつくって、冬場全部雪を解かしてしまうんです。その設備のおかげでいろいろなことが可能になりました。いままでは的であった雪を、「ここにしかない価値」へと逆転させて、新しい地域の魅力づくりをしています。