エネルギー観を刷新してくれる「デザイン」の力と可能性に期待しています。I’m hoping for the power and possibilities of design which re-invent visions of energy.

藤田 直哉

Naoya Fujita

批評家(Critic)

早稲田大学第一文学部卒業。東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻修了。博士(学術)。2008年に「消失点、暗黒の塔――『暗黒の塔』第5部、6部、7部を検討する」で第3回日本SF評論賞選考委員特別賞を受賞しデビュー。『虚構内存在:筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』(2013年/作品社)、『シン・ゴジラ論』(2016年/作品社)、『新世紀ゾンビ論:ゾンビとは、あなたであり、わたしである』(2017年/筑摩書房)を執筆。日本映画大学准教授。

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Regional Art-1

これ、青森の駅前で見つけたものなんですけれども、パチンコ屋だったとおぼしき場所がそのまま駐車場になっていて、リムジンという名前なんです。これを見た瞬間、これは美しいなと思って。美しくないですか。パンクじゃないですか、そのままパチンコ屋をただ転用してるんですよ。名前が「リムジン」だから、車を入れてしまえと言う思い切り。周辺はもうシャッター商店街みたいになっているんですよ、青森駅の周りも。でも、この、そのまま使っているだけ感じが、パンク精神みたいなものとして、何か廃墟の美学みたいで良かったんです。ポストアポカリプスもののゲームとかで見る雰囲気の、日本版だなって。これ好きな人、結構いると思うんですよ。こういうやけっぱちな美学もあっていいかなって。ものの考え方とかものの見方とか感じ方次第で結構ね、活力という意味でのエナジーは出ると思うんですね。

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Regional Art-2

これは兵庫県にある石の宝殿という神社です。石切場の近くにある神社で、巨大な石が水の上に浮いているように見えます。何かすごい、『ムー』の匂いを感じる場所です。どう見ても機械で切って放置された石だ、って僕は思うんですが、この神社の由緒のところには、天皇についてなど、神話のようなものが書いてある。これはすごいなと思って。言葉は悪いですが、ずうずうしくも神話を作って神社にして、すごい由緒をつくっちゃっているんですよ。そのたくましさと堂々とした「物語」の作り方に衝撃を受けました。今回の僕のテーマは「見立て」です。本当はただの殺風景な石切場かもしれない、しかし、神話とかを作ることで観光客も来るし、神話的な意味を持った場所としてその地域の人はアイデンティティを感じるかもしれない。そのことで世界の見え方が変わるかもしれない。そのずうずうしさというか、神話捏造のエネルギーみたいなものの功罪半ばする感じを、ちょっと紹介したいなと思いました。

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Regional Art-3

僕は今、様々な地域が、美術を使って頑張っている状況を結構収材に行ってます。『地域アート』という本も出しています。十和田市現代美術館での「地域アートはどこにある?」というシンポジウムの打ち上げです。シャッター商店街みたいなところの中にあるお洒落なカフェで、DJをやってすごい盛り上がっています。人がいないせいかすごい音を出しても東京ほどは怒られないっぽいんですよ。道路に面した一等地の一階で音を出しても、怒られない。東京じゃ考えられないですよ。その解放感と自由の感覚は、少し移住したくなる感じと、地方に希望を抱ける感じがありました。